大工だった亡父の言葉で今も覚えているのは「ティ ハゴーサン」だ。片仮名で書くと外国語のようだが、ティは手、ハゴーサンは汚い様を意味すると分かれば日本語らしく思えてくる。ただし、手が汚れているわけではない。
中学生になるとよく建築現場に連れて行かれた。木切れでなんでも作ってしまう父と違って、釘もまっすぐに打てない。そこで「ティ ハゴーサヌ」と言われる。サンが名詞形で、サヌだと汚いので○○と話が続く感じがある。日本語の「もどかしい」に近い意味だ。というわけで、跡は継がず、会社員になった。
これが足になると意味が変わる。「ヒサ(足)ハゴーサン」だと、足元がぬかるんでいるような時に使う。シチュエーションはまったく違うけれど、同じように落ち着かないので「ハゴーサン」と言いたくなる気持ちはよく分かる。
余談(この記事自体が余談ではあるが)ながら、琉球語を書くときに片仮名にするか平仮名にするか迷う。今回も「てぃはごーさん」と書いてみたが、人の名をかわいらしく呼んでいる気分になってきたので、片仮名に直した。