「離脱上等!」のライティング技術

書くこと、書かれたものを扱うことを仕事にしたいので、そういう本を読んでいる。中学数学が怪しい自分には縁遠いと思っていたブルーバックスに「書く技術」という書名があったので読んでみた。『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」〜「パラグラフ・ライティング」入門』(著・倉島保美)がその本だ。

ビジネス文書や学術文書を対象にしている。パラグラフとは「1つのトピックを説明した文の集まり」のことで、1パラグラフに複数のトピックを入れたり、逆にトピックを分散してはいけない、とある。パラグラフの最初はトピックを表明する要約文であり、続いてそのトピックを詳しく説明する補足情報の文が続く。要約文だけを読み進めても意味が通るわけだ。本自体がパラグラフ・ライティングで書かれていて、要約文は太字で書かれ、パラグラフの間は1行空いている。お察しの通り、横書きである。このブログと見た目は同じだが、この文章は読み物のつもりなのでパラグラフ・ライティングで書いてはいない。

共感したのは「文章観」だ。

読み手はできる限り短い時間で文章を読みたいと思っています。と言うより、そもそも読み手は文章を読みたいなどとは思っていません。読みたくはないが、そこに書いてある情報を入手しなければならないので、仕方なしに文章を読んでいるのです。嫌々読んでいるのですから、できる限り短い時間で読みたいと思う心理は自然です。

『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』(倉島保美)

なので、要約文を示し、読む必要があるかを提示する。読む必要性は、読み手によって違う。例えばベテランにとって既知のことなら読み飛ばすし、経験が浅くて腑に落ちないなら補足情報まで読む。(1)自分に関係あるか(2)詳細を読むべきか(3)優先度は高いか—-の順に行われる判断が30秒でできることが必要だと説く。(3)でyesになって初めて詳細まで読まれるわけだ。蛇足になるけれど、これは論理的文章についてであって、読むこと自体を楽しむ読書は当てはまらない。

NIE講座では「見出しだけに目を通して、気になった記事があれば本文まで読みましょう」と勧めてきた。文字数に圧倒される人が多いので、全ての記事を読む必要はないということを伝えるためだ。記事本文も同じで、最後まで読む必要はない。重要なことは前に書いてあるので、事件の経緯など既知の情報になってきたなと思えば、その先は読まなくてもいい。

パラグラフ・ライティングの文章も、ストレートな新聞記事も、言ってみれば「離脱上等!」の世界観で書かれた文章だ。WEBライティングの記事を斜め読みをしていると、閲覧者が途中で読むのをやめてしまう離脱をいかに防ぐかという工夫が書かれていることがある。WEB記事に自分が乗り切れないのは、離脱を前提にした世界に長くいたからなのだろう。まあ、そもそもWEBで読まれる記事を書く素養はないのだけれど。

この本から多くの示唆が得られたので、「パラグラフ・ライティング」タグを付けて、また書こうと思う。

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